次の日も、その次の日も、シャルロットは幻十郎に犯され続けた。 ある時は人を斬って昂ぶった感情を叩き付けるように。ある時は恋人同士の睦事のように。ある時は奴隷に対する主人のように、幻十郎はシャルロットの体を貪った。 シャルロットも、初めは大粒の涙を流しながら抵抗し、許しを請う言葉を投げかけていたが、回を重ねるごとに痛みはなくなっていることに気付いた。そして、自分の体が快感を得ていることに愕然とした。口から出る声はもはや悲鳴ではなかった。 (私は……この男に抱かれて喜んでいるの? ……娼婦のように、はしたない声を上げて男を受け入れているの……?) いつものように幻十郎の精を受けた後、シャルロットは呆然と天井を見上げて考えていた。 (まさか…そんなはずはない…私はちゃんと抵抗しているはず……) 確かに、抵抗はしている。だが、幻十郎にひと睨みされただけで止んでしまう、儚い抵抗であった。逃げることを放棄し、幻十郎に組み敷かれる立場に甘んじている。 (そんな馬鹿な……冗談じゃない!) シャルロットはバネ仕掛けの人形のように身を起こし、幻十郎が眠っているのを確認すると、そっと臥所を抜け出した。 (逃げなければ…今の内に逃げないと、私は抜け出せなくなってしまう!) 剣も鎧もないが、かろうじて着物は着ている。人里まで出ればなんとかなるかもしれない。シャルロットは音を立てないように庵を出ると、方角を確認することもなく森の中を駆け出した。 裸足で走っているため、足の裏がじんじんと熱い。どれぐらい走ったのか、シャルロットには既にわからなくなっていた。自分が真っ直ぐ走っているかどうかもわからない。それでも、走ることで幻十郎から遠ざかっていると信じていた。しかし―― 「どこへ行く?」 右側から、その声は聞こえた。声に弾かれたように、シャルロットは硬直してしまう。 「そんな……馬鹿な……」 幻十郎が立っていた。 「森の中は迷いやすい。方向を間違えたか…残念だったな」 さくり、と草を踏んで歩み寄ってくる幻十郎。 「ひっ……」 情けない声を上げて、シャルロットは後退する。が、すぐに木に行く手を阻まれてしまう。 「覚悟はできているな?」 「いや……来ないで……」 幻十郎が、白蝋の如く蒼ざめたシャルロットの手首を掴んだ。 「な……何をする気だっ!?」 恐怖心を払拭しようと、気丈にシャルロットが叫ぶ。 庵に連れ戻された彼女は、両手首を縄で拘束されたまま、梁から吊り下げられた。衣服を剥ぎ取られても、胸や秘所を隠すことすらできない。 「この期に及んでその態度、往生際の悪いことだ」 幻十郎の手には縄が握られている。不吉な予感に、シャルロットは身を震わせた。 「や……やめろ……」 「やめるわけなかろう」 無表情に言い放ち、幻十郎はシャルロットの体に縄を巻きつけ始める。 「な、何を……」 縄は、シャルロットの双丘を挟み込むように巻かれていく。左右の膨らみの付け根を、きりきりと締め付けながら、胸の豊かさを強調するように強く縛られた。恐らく、跡が残るだろう。荒縄にこすられる肌の痛みに、シャルロットの眉根が、きゅっと寄せられた。 「痛いっ!…ほどいて……」 気丈な声は、すぐに哀願へと変わる。しかし、幻十郎の拷問吏のような冷笑は消えない。 「いやっ! いやぁっ!」 ぶんぶんと頭を振り、許しを請うシャルロットの太股にも、縄が巻きつけられた。縄が引かれ、抵抗も虚しく両の脚が割り広げられていく。その縄が梁に固定されると、シャルロットはあられもない格好を取らされることになった。 「あ……あぁ……」 宙に浮いた状態のシャルロットが自由に動かせるのは、膝から先と首だけ。動かせる部分を必死に動かしてもがくものの、事態は変わらない。しかも、きつく縛られた縄が絶えず痛みを伝えてくる。やがて、膝から先と首も、力なくだらりと下がった。 「満足したか?」 作業を終えた幻十郎が、吊り下げられたシャルロットの正面に立った。 「お願い、ほどいて……」 「駄目だな。俺はちゃんと忠告しておいたはずだ」 幻十郎は無慈悲にもそう言い放ち、腰をかがめた。大きく開かれた脚の付け根を、何をするでもなくただじっと見つめる。 「……み、見ないで……」 弱々しくこぼれるシャルロットの哀願。しかし、今までと同じように、それが聞きいれられることはなかった。 「ひくついてきたぞ。見られると感じるのか?」 幻十郎の言葉を聞いて、シャルロットの顔が熱病に冒されたかのように、真っ赤に染まった。秘唇を構成する襞が、きゅっと収束するようにうごめいた。その動きに合わせ、襞の奥からぬらりと光る液が滲み出す。 「違う……ちがうぅ……」 「何が違う? 触れもしないのに濡らしておいて」 幻十郎は至近距離から、視線だけでシャルロットの秘所を犯す。彼が言葉を発する度に、熱い吐息が吹きかけられ、シャルロットはわずかに身をよじった。 「ひゃうっ!」 シャルロットが悲鳴を上げた。何の前触れもなく、幻十郎が秘唇に舌を這わせたのだ。溢れ出す愛液をすくいとるように舐め上げ、それを襞の奥に戻さんとするかのように、深く舌を差し込む。体の自由を奪われたシャルロットは、吊られたまま身悶えた。それに合わせて、縄がぎしぎしと鈍い音を立てた。 「ひあぅ! いやぁ……あくっ!」 涙混じりの声を聞きながら、幻十郎の舌はいいように秘所を嬲った。 「何ともすごい量の愛液だな…尻にまで垂れているぞ」 「そんな、うそ……」 「嘘なものか」 事実だった。シャルロットの秘所から溢れ出した愛液は、幻十郎の舌の動きに合わせて粘ついた音を立てながら、白く丸いカーブを伝って菊門にまで流れ落ちていた。 「ふん、これなら容易に受け入れられるだろう」 「え……何を……?」 シャルロットの質問には答えず、幻十郎は湧き出る愛液を自らの指に絡め始めた。さらなる量の愛液を求め、秘所の奥まで指が侵入させる。 「ふぅっ……ぁ……く!」 押し寄せる感覚に翻弄され、忘我に達しようとしていたシャルロットは、突然身を硬くこわばらせた。幻十郎の指先が、菊門をこじ開けるようにして侵入してきたのだ。 「だ……ダメ! そんなところ……やめて!」 「忠告に従わなかった貴様が悪いのだろう。覚悟を決めろ」 「ひぐぅっ!」 ずぶ、と指が深く埋め込まれた。排泄器官に異物を挿入するという、きわめて屈辱的な行為は、シャルロットの背筋を凍りつかせた。なおも中で動き回る指に髪を振り乱す。 軽く20分は嬲られただろうか。ようやく幻十郎の指が引き抜かれ、シャルロットは全身の硬直を解いた。はぁはぁと荒い息をつきながら、焦点の定まらぬ目で幻十郎を見ている。 油断していた、と言うしかない。幻十郎が、指で嬲るだけで満足するはずがなかったのだ。しかし、シャルロットは一瞬の安息に身を委ねた。体の力を抜いてしまった。 ――――ぐぶり。 「あぐぐううぁぁあああああ!!」 シャルロットの、それまでは固く閉じていた菊門に、幻十郎の怒張がねじ込まれていた。あまりの激痛と衝撃に、気も狂わんばかりの絶叫を上げる。大きく見開かれた目から涙が溢れ、顎が外れるかと思うほどに開いた口の端から唾液が漏れる。何かを求めるように舌が突き出される。 「あ……が……」 喉の奥から、絞り出すような声が漏れた。びくんびくんと、しなやかな長身が痙攣するかのように揺れた。 「た……たす……けて……」 ある意味では、破瓜の衝撃よりも大きかった。シャルロットは何とか逃れようと腰を捻るが、不自由な体勢ではとても逃れられない。それどころか、動く度に新たな刺激を与えられてしまう。 「おね……がい、もう、ゆるして……」 「いいや、許さん!」 幻十郎はそう宣言すると、一度腰を引いた。顕著な雁首が尻の内壁をこすり、シャルロットの頭が跳ね上がる。 「くはっ!」 息をつく間もなく、続けて突き入れられた。 「ひっ!」 我ながら情けない声だ。シャルロットは自分の声を聞いて思った。だが、とても堪えることはできなかった。 「ぐっ!……ふぐっ!……ひいっ!……」 幻十郎の突き上げは、徐々に激しくなっていった。ずんずんと直腸に叩き付けられる怒張に、シャルロットの体はがくがくと揺れる。全身がバラバラになりそうだった。 「もはや言葉も出んか?」 「うくっ!……ゆ、ゆる……して……く……ださ……あぁっ!」 「もう逃げないと誓うか?」 訊ねながらも、幻十郎の突き上げは止まらない。もはや、シャルロットの誇りも精神力も、尽き果てようとしていた。涙ながらに叫ぶ。 「誓う、誓いますぅぅっ!」 「俺の奴隷になるか?」 「は、はいぃっ! 奴隷になりますから、許してぇぇ……っ!」 シャルロットは叫んだ。その宣言が、どういう意味を持つのかは理解していたが、苦痛から逃れるために、自ら幻十郎の前に屈したのだった。 ――もう駄目……私は堕ちた。 つう、と白い頬を涙が伝い、落ちていった。 そしてこの日を最後に、シャルロットは逃亡を完全に諦らめたのである。 |