ムエタイレディはオレンジ道着の夢を見るか・前編



「ずいぶん女らしくなったじゃないか…綺麗だぞ、キング……」
 オレンジ色の道着を着た金髪の青年が、耳元で囁きながら自分のシャツのボタンをゆっくりと外していく。
「リョ……リョウ……何を……」
 戸惑いながらも、本気で拒むことはできず、キングはドキドキと高鳴る鼓動を感じながら、ぼんやりとリョウの手に目をやっていた。
「ずっと、こうしたかったんだ……」
 リョウはそう呟きながら、キングの短く刈った金髪に口づけする。
「あっ……」
 シャツのボタンが外れ、薄いブルーのビスチェに包まれた胸が現れる。
「すごいな、キング…こんな胸、どうやって押さえてたんだ?」
 ビスチェの中で窮屈そうに収まっている胸に唇を寄せるリョウ。
「あん……」
 耳元をくすぐるリョウの吐息に、キングは熱い息を吐いた。
 リョウの手がベルトとボタンを外し、ジッパーを下げていく。キングは抵抗もせず、漁の腕に身を任せていた。
 するり、とズボンが脚から抜け落ちた。鍛え上げられた、しなやかな脚がリョウの視線に晒される。ビスチェと同色のショーツを隠すように、キングは膝を立てた。
「あぁん……」
 リョウの指がショーツの上から秘唇をなぞっただけで、キングは甘い声を出し、閉じていた膝をそっと開く。
「あぅん!」
 ガードが緩んだ隙を突くようにして、ショーツの中に滑り込んだリョウの指が、はしたないほどに潤んだキングの秘唇を割った。
(こんなに濡れてる……まだ……何もしてないのに……)
 キングは呆然としながら、自らの秘所とリョウの指が立てる、粘着的な音を聞いた。
「いやらしいな、キング……もう、欲しいのか?」
「……」
 キングは何も答えず、リョウに向かって迎え入れるように両手を開いた。

「な……何て夢だい……」
 キングはベッドの上で、愕然とした表情を浮かべる。全身にじっとりと汗を滲ませ、はぁはぁと荒い息をつく。裸で寝ていたせいか、シーツも汗でしっとりと湿っている。
「やだ……濡れてる……」
 ベッドのシーツに手を触れ、真っ赤になって布団で覆い隠す。それから、ここが大会主催者の用意したホテルであることを思い出し、ふぅ、と息を吐いた。
 バスルームに向かいながら、キングはペチペチと自分の頬を叩く。
 世界規模の格闘大会「ザ・キング・オブ・ファイターズ」に出場するようになって七年目。いつも女性格闘家チームとして出場していたキングだが、今年はなぜか、極限流空手のチームで参加することになってしまった。
(リョウと同じチームっていうのが、影響してるのかしら…?)
 キングがバスルームの扉に手を掛けた時、ドアをノックする音が聞こえた。
「起きてるか、キング?」
「リョ…リョウ!? ちょ、ちょっと待って!」
 キングはシャワーを中止し、慌ててバスローブを羽織る。
(あ、バスローブ一枚ってのはマズイか…ああ、でも服はトランクの中だし…)
「キング、どうかしたのか?」
「すぐ開ける!」
キングは服を着るのを諦め、バスローブ姿のままドアの前に立つと、呼吸が落ち着くのを待ってドアを開けた。
「お…お待たせ! どうかしたのかい?」
 できるだけ平静を装ったつもりだが、こころなしか声が上ずっていた。
「何言ってんだよ…朝食の前にミーティングしようって言い出したのはお前だろ?」
 いぶかしむように自分の顔を覗き込むリョウ。キングは、一瞬その目に引き込まれるように、ぼんやりとしてしまう。夢の中でのリョウが、脳裏にフラッシュバックしてきて、キングの頬はほんのりと紅潮した。
「本当に、どうかしたのか?」
「えっ!? い、いや、なんでもないんだ…ごめん、すぐ用意するよ」
 まさか、「あんたと抱き合う夢を見たんで、意識してしまうんだ」とは言えず、キングはしどろもどろになりながらリョウを部屋から追い出したのだった。
 その日の試合は、キングにとって散々なものとなった。
 あろうことか試合中に呆けてしまったキングは戦意喪失と見なされ、本来なら相手にもならないほど格下の選手に敗北を喫したのである。試合そのものは二番手のリョウが三人人抜きして事なきを得たが、チームの戦績には不名誉な汚点を残し、リョウに散々追求される羽目になった。
「まいった……」
 何とかリョウの追求を逃れ、ホテルの部屋に戻ったキングは、シャワーを浴びてすぐにベッドに潜り込んだ。肉体的にはともかく、精神的に疲れ果てていたキングは、そのまま泥のように眠りに落ちていった。

「いいかっこうだな、キング…」
 真っ暗な空間の中、その声だけがキングの耳に響いた。
「何だ、今日の試合は? 腑抜けた試合しやがって…」
「んぅ……んむぅ……」
 キングの言葉は、口にかまされたボールギャグのせいで、単なるうめき声にしか聞こえない。目隠しされて視界は利かない。両手は拘束されて頭上に吊り上げられ、脚はぱっくりと開いたままベルトで固定されている。
「わかってるな、キング……これは仕置きなんだ」
 着ていたシャツは乱暴に引き裂かれ、ビスチェは腹部にまで引き下げられている。スラックスはちゃんとはいているが、股の部分が丸く切り取られており、そこから覗くショーツはキング自身の分泌液でぐっしょりと濡れている。
「欲しいか…? ダメだ、まずはこっちだ」
 優しさなど微塵も感じられない声で、リョウが言った。
「うふぅ……」
 ひた、とリョウの無骨な両手がキングの豊かな乳肉を包んだ。感触を楽しむように、ゆっくりとこね回す。時折、乳首を摘み上げられると、キングは拘束されたまま切なそうに身をよじった。
「ふぅー……うふぅー……あうぅ……」
 ボールギャグの穴から、キングの涎がとろとろと溢れ出す。リョウはその涎をすくいとり、指でキングのふっくらした唇に塗りつける。
 見えなくても、リョウが何をしているのかははっきりとわかった。それは、キングを興奮の高みへと突き上げていった。
「オレが何をしてるかわかるか?」
 キングはこくり、とうなづく。
 二つの胸の膨らみの間に、熱いほどにたぎった棒が挟まれた。
(あ……これ……リョウの……)
 さらに、それを押しつぶすように乳肉を押さえつけられた。
(挟んでる……挟んで…動かすの……?)
 キングが考えた通りの行為を始めるリョウ。押さえつけた柔肉の間を、リョウの怒張が前後する。
「柔らかいな、キング…乳首もピンピンに尖ってる…」
「ふぅ……んふぅ……」
 リョウの動きに合わせて、キングの胸はぐにゅぐにゅとひしゃげた。時折、亀頭が下唇に触れ、その度にキングは鼻に抜けるような声を出す。
「この胸でイカせてもらうぜ」
 リョウはキングの胸を掴んだ手に力を込め、さらに激しく動く。双乳の間で、リョウの怒張はビクビクと脈打った。
(ああ……リョウのが……熱い……)
 闇の中で繰り広げられる行為に、キングの意識は異常なほど興奮していた。
「最高だ……キング、イクぞ!」
 胸の谷間から顔を出したリョウの怒張が、ビクビクと震えた。
 びゅるっ! べちゃ!
「あ……あふぅ……」
 びゅっ!! べちゃ! びちゃっ!
 次々とほとばしるリョウの精液が、音を立ててキングの顔に飛び散っていく。
(あ……かけてる……リョウが私の顔に………)
「すげえいやらしい顔してるぜ…ゾクゾクする」
 耳元で囁きながら、リョウはキングの顔に自らの精液をこすり付けていく。
「綺麗だ……」
リョウの声を遠くに聞いていたキングは、自分の体が歓喜にぶるぶると震えていることに気づいていなかった。
「まだ終わってないぜ…」
 くい、とキングのショーツが引っ張られた。横へずらして、秘所があらわにされたが、
次なる刺激はなかなか襲ってこなかった。
(あ……あ……み、見てる……リョウが、私のあそこを…………)
 キングには、リョウが何をしているのか、はっきりとわかっていた。
「いやらしい女だな、キング…体の自由を奪われて、こんなに濡らして…」
「ん……んうぅ……あふぅ……」
 抗議の言葉は声にならない。
「すごいな…ヒクヒクしながら、奥からどんどん溢れさせてるぞ。綺麗なピンク色で、ぬるぬる光ってる…」
(言わないで……)
「これじゃ、男装しても誤魔化せないだろうな……ズボンも下着もグショグショだぜ」
 リョウに言葉で嬲られ、キングの全身はぶるぶると震えた。
「もう、オレのが欲しくてたまらないのか…?」
(違う……違うのリョウ…そんなこと言わないで……こんな状況じゃ……)
 心の中で必死に訴えるキング。だが、その思いとは裏腹に、キングの首は弱々しく縦に傾いた。
「素直だな、キング……色っぽいぜ……」
「んぅ……」
 くちゅ、という音が、驚くほどはっきりと聞こえた。リョウは自らの怒張を、キングの潤みきった秘唇にあてがい、弄うように動かした。
「んひゅ……んぅ……ふぅん……」
 切なそうに眉を寄せ、キングが声を漏らす。ボールギャグのせいで息の抜けるような声になり、それがキングの興奮を高めた。
(こんな……レイプみたいなやりかた……なのに……)
 拘束されたまま、キングはモゾモゾと腰を振る。じらすようなリョウの動きのせいで、秘唇のうずきが我慢できないほどになる。
「んうぅっ!! んふぅ、んふうぅぅぅぅっ!!!」
(入れて!! リョウ、入れてぇぇぇぇっ!!!)
 涙と涎で顔中ベトベトしながら、キングは哀願した。もう、どうなってもいいと思った。
「行くぞっ!!」
 ぐちゅっ!! 溜まりに溜まった愛液を飛び散らせるように、リョウの怒張を受け入れる。
「んくぅぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
 その瞬間、キングの意識は真っ白な閃光に包まれた。

「また……何なのよ、一体……」
 キングは両手で顔を覆い、布団に突っ伏した。
 昨日より、さらに淫らな内容の夢に、キングの秘所は恥ずかしいほど濡れていた。服を着たまま寝ていたのでシーツは無事だが、その代わり下着はぐしょぐしょに濡れ、スラックスにまで染みを作るほどだった。
 恥ずかしいやら、情けないやらでキングは真っ赤になっている。今の自分の顔を、鏡で見ることすら躊躇われた。きっと、ひどい顔をしているだろう。
 何より、今リョウと顔を合わせるのが恐ろしかった。こんな状態で彼の顔を見て、意識しないわけがない。
 キングは、昨日の反省会を兼ねたミーティングを、キャンセルすることにした。
「キング、お前いったい、どうしちまったんだ?」
 試合中に呆けたり、ミーティングをキャンセルしたり、話し掛けても上の空だったりと、キングらしくない態度があからさまに目立ってきた頃、彼女の部屋を訪れたリョウが真剣な表情で訊ねた。
「どうって言われても……」
 キングは困ったようにうなだれる。不調の説明をしても、恐らくリョウには理解できないだろう。それどころか、変な目で見られるかもしれない。キングは口をつぐんだまま、ちらりと上目遣いにリョウの表情を伺う。その視線がリョウの心配そうな視線と合うと、慌てて目を逸らしてしまう。
「オレたちはチームメイトだろ? 相談があるなら言ってくれよ」
「いや…そういうわけじゃない…けど……」
 膝の上で組んだ手をモジモジと動かし、視線をさ迷わせながら呟くキング。リョウは気づかなかったが、その顔は明らかに上気し、全身が火照っている。
「なあ、しっかりしろよ! こんなんじゃ、次の試合も負けちまうぞ!」
 リョウは少し苛ついたように言いながら、キングの両肩に手を置いた。
 「きゃあ!」
 キングがビクッと全身を震わせながら叫んだ。意外な反応に、リョウの方が驚いてしまう。
「キ…キング?」
「な、なんでもないったら!!」
 真っ赤になって、リョウを突き放そうとするキング。だが、リョウはしっかりとその手を掴んでいた。
「ちょ、ちょっと、離してよリョウ!」
 だが、リョウはキングの手をしっかりと掴んだまま、じっと彼女の目を見詰める。彼が浮かべた辛そうな表情に、キングの胸の奥がチクンと痛んだ。
(……そんな目で見ないで……)
 真っ直ぐ自分に向けられたリョウの視線を受け、キングは力なくうなだれる。
「何でもないヤツの態度か、それが? オレはお前が心配なんだよ……」
「リョウ……」
 キングは、自分の肩に置かれたリョウの手に、そっと自分の手を添えた。
「心配なのは、大会の結果じゃなくて…?」
 思わず、そんな言葉がキングの口をついた。
(何言ってんだい、私は!?)
 慌てて口を押さえるキング。だが、彼女の言葉はしっかりと、リョウの耳にも届いていた。リョウの表情が一瞬険しくなったかと思うと、次の瞬間には一切の表情が消えていた。
「あ……リョ……」
「……悪かったな」
 リョウはキングの肩から手を離し、立ち上がる。そのままキングの方を振り返ることもなく、黙って出て行った。その後ろ姿を、キングは呆然と見送った。
「……リョウ………」

 暗い部屋の中。キングはリョウの前にひざまずいていた。
 身に付けているのはブラジャーとショーツ、ガーターベルト。そして、細い首にかけられた首輪だけだった。ブラジャーはカップの部分がくり貫かれ、豊かな双球があらわになっている。ショーツは秘所が丸見えになるように切れ込みが入っている。
 いずれも、「隠す」という役割をまったくになっていない代物である。
「さあ、キング……謝りたいことがあるんだったな?」
 リョウはひざまずいたキングの前に立ちはだかり、見下すような目つきで告げる。
「はい……どうか私の謝罪を受け入れてください……」
 キングは顔だけを上げてリョウを見上げ、すがるような目で言った。
「……ご主人様……」





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