窓の月/sample



 ある日の宵の口。ここ、サカザキ家のリビングでは父と娘がまんじりと
もしない様子で落ち着かない時間を過ごしていた。というのもイギリスで
あればお茶の時間を少し回った頃に、近年朴念仁の汚名を甘受して久しい
長男ぼうが、麗しの『バーの女主人』を家に招き入れ、それきり部屋に閉
じこもってしまったからである。
 部屋に入ってすぐに一度、娘のユリがお茶とお菓子を差し入れてからあ
とは、部屋の中の様子をうかがい知る術は物音ひとつすら無い状況で、父
娘は1階の天井を見上げてひとしきり、互いに顔を見合わせてため息をつ
くばかりだった。
「…ところでユリ、あの2人はその後どうなんだ? お前は何か聞いては
いないのか?」
 父・タクマがしびれを切らして目の前の娘にそう問いかけると、娘は少
しいさめるような口調でこう返した。
「あのね、お父さん。あの2人がとっくにどうにかなってるなら私だって
こんなに気を揉んだりしないわよ。
 それよりダメよ!? あの2人、奥手なんだから変にちょっかい出したり
しちゃ。上手く行く物も行かなくなっちゃうから!」
 ぴしゃりとそう言い放たれ、タクマは二の句も告げず腕組みをすると
「むぅ」と喉を鳴らした。
「とにかくね、あの2人の事は黙って見守ろうよ。こうして家に連れて来
たのだって、あのお兄ちゃんにしてはすごい進展じゃ無いの。」
 そう言うと立ち上がり「じゃ、私はこれからロバートさんとデートだか
ら。」と早々に部屋を出て行ってしまった。
 あとに残された父は娘の背中を目で追いながら、それはそれでやるせな
い思いをその表情ににじませるのであった。

 シンプルなパイプベットと小さなテーブル以外は特に何も無い質素な部
屋だった。
 テーブルを挟んで向い合せに座る男女は、互いにもうすっかり冷めてし
まった紅茶の入ったカップを指先や手のひらで弄び、いたずらに時を過ご
していた。
 ふいに時計を見上げ、男が沈黙を破る。
「き…今日は、どうする?」
 女は伏し目がちに指先のカップのフチを見やると、ふぅ、とため息をつ
きながら言った。
「どうって…何を。」
 そしてまた沈黙。
 こんな沈黙は今日何度目だろうとぼんやり考えながら、女は宙を仰い
だ。そして数瞬。『今日も駄目だろう。』そう確信して席を立とうと女が
テーブルに手をつくと、男は思いつめた顔でその手首をつかんだ。予想外
の出来事に女は驚いた顔で男の顔を見返す。その頬は紅潮し、胸は早鐘を
打っていた。
「キング…! き…今日は、いいんだろう…?」
 絞り出すような男の問いかけに、女はうつむき黙ってうなずく。それを
確認した男はぎこちない手で女の肩に手をまわすとそのまま自分のほうに
引き寄せ、その柔らかな唇に荒々しく自分の唇を重ねると、最初は戸惑い
ながらも、徐々舌をからめ、激しく吸い上げた。それは2人がお互いに長
く待ち望みながら今まで果たされなかった瞬間だった。
 長い、長いキスのあと、その別れを惜しむようにどちらからともなく唇
を離すと、2人の間を繋ぐように一筋の白糸が現われ、そして消える。2
人は荒い呼吸を整えようとすることも無く見つめ合うと、男が女を抱き上
げ、その粗末なベットへと横たえた。女は不安と期待の入り交じるその赤
い顔を、女への欲情をあらわにした目の前の男へと向ける。
「リョウ…お願い…来て……。」
 仰向けに寝かされたことでより強調され、その呼吸に合わせて上下する
度にはち切れそうになるシャツの下のたわわな膨らみを解放しようと男の
手が胸元にのびると、女が小さく「あっ」ともらす。その声を聞いた途端
男はこらえ切れず、ひとつひとつボタンを外すのももどかしいとばかりに
一気にシャツの合わせをつかんで左右に開いた。小さなボタンがプチプチ
と宙を舞い、白く柔らかな双丘が窮屈そうに目の前に飛び出してくると、
男はその谷間に釘付けになった。その食い入るような視線に気付いて女は
羞恥の表情を浮かべ顔を背ける。すぐさまゴツゴツとした指がやわ肉を
荒々しくつかんでビスチェタイプのブラジャーから救い出すと、先端を口
に含まれ強く吸われた。
「痛ぅっ…!」
溜まらず女が小さな悲鳴をあげるのと同時だった。
「馬鹿者!! 女の扱いがなっとらん!!」
 2人同時に弾かれるように声の方を見ると、そこには男の父が憤怒の表
情を浮かべ立ちはだかっているではないか。
 2人は軽くパニックに陥りながら、女は慌ててシーツをつかみあげると
胸元を隠し、男は真っ赤な顔で部屋の入口に立つ父親を紛糾した。
「なっ…! このクソおやじっ! のぞき見するなんて何考えてるん
だ!!」
「のぞき見などしておらん! 盗み聞きしとっただけだ!!
 そんなことよりリョウ、お前は女心がこれっぽっちもわかっとらん!!
 なんと嘆かわしいことだ! そこに座りなさい!!」
 そういう問題じゃ無いだろう、と突っ込みたいのはやまやまだったが、
その迫力に圧倒されて思わずリョウはその場に正座する。それを見届けた
タクマは、親子のやり取りをあっけに取られて見ていたキングの方に歩み
寄り、胸の前で堅くにぎられていたシーツを荒々しく剥ぎ取った。
「きゃっ!」
 自分でも聞いたことの無い女らしい自分の悲鳴にぎょっとして思わず口
元を押さえるキングの隙をついて背後に回ると、タクマはキングの肢体を
リョウに見せつけるように抱え上げた。
「あっ! 何を…っん、くっ…ふぅん!」
 背後からまわされた手に乳房を優しく触れられ、キングは仰け反りあら
れも無い声をあげる。
「いいか、リョウ。女の身体はこのように、最初は優しく、ガラス細工を
扱うがごとく細やかな神経で扱うものだ。
 見なさい、お前が乱暴に扱うからあとが残ってしまったでは無いか!」
 乳房に沿うように指の形がくっきり残っているのを見て、リョウは「な
るほど」とうなずいた。
 その間もタクマは、時に触れるか触れないかというように優しく乳房の
周囲を指でなぞり、時に手のひらで包み込むように乳房全体を揉み、少し
ずつ堅くとがり出した乳首を軽くつまんで震わせこねあげる。あまりの出
来事に我を忘れてタクマに身を任せるはめになったキングは、抵抗するこ
とも忘れ快楽の波をただ受け入れるばかりだった。
「さて、胸ばかりいじっておっても女性は満足せんからな。
 ほれ、ぼーっと見とらんで続きをやって見なさい。」
 タクマにそう促され、リョウは立ち上がると恐る恐るキングのズボンに
手を掛け、スルスルと脱がせる。
 キングは上半身をタクマに固定され、いまだ乳房への愛撫から解放され
ず、そして今まさに下半身をリョウの手によって晒されて、恥ずかしさと
思うさまその肉棒で蹂躙されることへの期待とで胸がいっぱいだった。
「いや…恥ずか…しい…。」
 ショーツ以外のすべての着衣を剥ぎ取られ、今まさにその最後の砦へと
リョウの指がかけられると、またタクマの叱咤の声が飛んだ。
「こら、そうがっつくんじゃ無い!
 パンティを脱がせる前に、まずしっかりそこが濡れておるかどうか確か
めるんだ。
 布地の上から割れ目に指を這わせて見なさい。おっと、さっき教えた通
り、優しくだぞ。」
 その言葉を聞いているのか、小さな三角形の布が食い込むように張り付
く小さな空間を食い入るように見ていたリョウが、意を決したように息を
呑んで右手の指先ををその場所へとあてがう。
「どうだ? 湿っておるか?」
 耳もとで聞こえるタクマの恥辱的な台詞と、その場所をリョウに布地越
しとは言え触れられたことと、既にそこがぐしょぐしょに濡れそぼってい
る自らの感覚で、キングはいっそう羞恥の念を強くし、そしてより興奮し
ていた。
「んふぅっ!」
「うわ……ビショビショのヌルヌルだ。どうしたんだ? これ…。」
 キングはリョウの言葉に、恥ずかしさのあまりぎゅっと目をつぶる。タ
クマはそれを聞いて「ほう」とつぶやくとリョウにこう伝えた。
「それは愛液と言うやつだ。お前を受け入れる準備がしっかり出来ている
と言うことだな。
 どれ。そうしたら、お前も服を脱いで準備をしなさい。
 準備の整ったご婦人を待たせては失礼だ。」
 言われるままにリョウはシャツを脱ぎ捨て、既にパンパンに膨らんだズ
ボンのジッパーをもどかしげに下ろすと、トランクスごと一気に脱ぎ捨て
る。その肉棒は今にもはち切れそうに天を仰ぎ、ビクビクと脈打ってい
た。
 うっすらと目を開けその様子をうかがっていたキングはモジモジと太も
もを擦りあわせ、無意識に催促をする。
「ほれ、キングがお待ちかねだぞ!」
 乳首をつまみこねまわしながらタクマはリョウに促す。そして今度こそ
リョウは目の前で香立つように誘う女体を覆い隠すショーツのフチに手を
掛け、はじめはゆっくり、そして一気に引き下げた。
「んぁっ! やぁ……っ!」
 ショーツとその秘所とを繋ぐように粘着質の透明な汁が筋を描く。リョ
ウはごくりと息を飲んでキングの両膝に手を掛け、左右に割り開いてみ
た。
「あっ…はぁ…っっ!!」
 リョウの眼前に晒されたその花弁はすっかり潤みほころんで、今もなお
しとどに蜜を溢れさせ、甘酸っぱい芳香を放ち男を誘っているようであっ
た。
「これが…キングの…。」
 既にカラカラに乾いた喉を鳴らすことも出来ず、絞り出すようにリョウ
が言う。
 ぬらぬらと濡れ光る肉ひだは時折ぴくぴくと痙攣し、その度に内側から
蜜をにじませしたたらせていた。あふれ出した汁は起伏にそって菊門の方
にまで流れ出しそのままたれ落ちて白いシーツの上に大きなシミを作って
いた。
「やだ…そんなに…見るな…!」
 ふぅふぅと荒い息を繰り返しながらキングはようやっとその台詞を放っ
た。リョウは初めて見るそこに釘付けで気付く様子も無いが、タクマに
は、言葉では拒絶をしめしながらその身体はすっかり欲情し、その肉壷に
男を迎え入れるのを今か今かと待ち望んでいるキングの様子が手に取るよ
うにわかっていた。これがあのMr.BIGの元でバンサーをつとめ、かつて
はサウスタウンで無法の限りをつくしたと言う、普段は勝ち気な男装の麗
人の“女の部分”なのだろうと思うと感慨深いものがある。
 と、タクマが物思いにふけっている最中にもリョウはその蜜壷に己自身
をあてがい、今まさにその中に埋めようとしている。
「ちょっと待ちなさい。」
 またしてもタクマによる制止。リョウは少しもどかしげに躊躇しながら
もその指示に従った。
 タクマはキングの太ももに手をかけると軽々と持ち上げ、ちょうど大人
が子供の小便を手助けするような体勢にしてその部分をリョウから良く見
えるように突き出させた。
「あっ! やだ!」
 キングが悲鳴のように小さく叫ぶ。しかし心からの拒絶では無いらしく
激しい抵抗は無いようだった。気にせずタクマは恥丘をなぞるように指し
示し、リョウに向かって説明を始める。
「いいか。この部分が大陰唇と言う。そしてこれが小陰唇。」
「ひぁっ!」
 触れられてビクリと反応する。
「この間にある尿道口や膣口にばい菌が入ると病気になるから汚い手で
触ってはいかんぞ。」
「あっ、んっ!」
 説明しながらクチュクチュと入口をこねまわす。
「そしてこの内側にある突起が陰核、つまりクリトリスと言うやつだ。わ
かったか?」
「ひゃんっ!」
 包皮を剥かれ突起を軽くつままれて、あられも無い声を出す。
「いい反応だ。さてはいつも自分で慰めているのかな?」
 応えず、口をつぐんで顔を真っ赤にする。
「まったく、ふがいない息子で迷惑をかけるな。
 さて、リョウ。これらを優しく愛撫してほぐしてあげなさい。
 今回はそれほど必要ないようだが、前戯に手を抜く男は嫌われるぞ。」
 リョウはうなずき、恐る恐る触れてみた。ねっとりとした汁が指先に絡
み付いたかと思うと、触れた途端にヒクヒクと肉ひだが収縮する。
「あふぅ…ん!」
 官能的な声に鼻息も荒くなると、吹き掛けられた息が触れてまた肉ひだ
が収縮した。
「陰唇を左右に押し広げて中の方も良く見てあげなさい。
 どうやらキングはお前に見られて感じているようだ。」
 その言葉を聞いてキングはいやいやと首を振る。しかしその表情はどこ
か恍惚として、愛しい男に自分のすべてを見られていると言う快感に酔い
しれているようだった。リョウは言われるままに両手をあてがい肉壁を左
右に割り開く。パックリとひらいた蜜壷はとめど無く甘い蜜を溢れさせて
くる。溜まらずリョウはその秘肉へとむしゃぶりつくと、べちゃべちゃと
音を立てて舌を這わせ、ジュルジュルとその蜜を吸い上げた。
「んはぁっ、あっ、くぅ、んっ、んっ、あぁっ!」
 小さな突起をこねあげられ、肉ひだを吸われ、堅くとがらせた舌先を蜜
壷へと挿入されかき回されると、キングは軽い絶頂を向かえてしまったよ
うだった。タクマの腕の中で数瞬身体をこわばらせ、リョウが秘肉から唇
を離すと次第に全身の力が抜けてゆき、すっかりタクマの腕にその身を任
せてしまう。ハァハァと肩で息をしながら白い肌にうっすらと汗をにじま
せていた。
「お、俺…もう……。」
 しびれを切らしたようにリョウが口を開いた。先ほどからずっとお預け
状態だったリョウのそれは先走りでヌラヌラと鈍く光り、今にも弾けてそ
うにビクビクと脈打っていた。確かにこれは我慢の限界だろう、と、タク
マはキングの身体をベットの上に解放しリョウに向かって足を開かせた。
「あぁ……ん。」
 まだ絶頂の余韻も覚めやらぬキングが喘ぐ。うつろな視線はリョウのそ
れへと釘付けのまま。
「まずは思うようにやって見なさい。基本はあくまで優しくな。」
 タクマはキングのかたわらへと移動し、腕組みをして様子をうかがう。
 リョウはすぅっと大きく息を吸うと気を落ち着けるかのようにゆっくり
吐き出し、解放されたキングの脚の間に身体を滑り込ませると、先端をあ
てがい、横たわる女体に覆いかぶさる。キングは両手を前方に開きそれを
迎え入れる。頬を寄せるように抱き合い、首筋にキスをしながら、リョウ
はタクマの視線を気にするように囁いた。
「…いいか?」
「あ…早く…。」
 耳もとをくすぐるような甘い声にすぐさま応えて肉棒をゆっくりと埋め
てゆく。亀頭部分を飲み込んで膣口はキュッと閉まりむさぼるように絡み
付いた。
「……ぁっ!」
「うっ…!」
 首筋に熱い吐息がかかり、それだけでイッてしまいそうになるのを堪え
ながら、リョウは一気に根元までキングの膣内に突き入れた。
「あぁっ! いぃ…!」
「俺も…くっ!」
 お互いにきつく腕をからめながら抽送をくり返す。ブチュブチュと肉と
体液の擦れる音を放ちながら動きは徐々に早まる。どちらからともなく唇
を求め、舌をからめてお互いのだ液をむさぼる。荒い呼吸と快楽の嬌声を
くり返しながら上り詰めると、先に根を上げたのはリョウの方だった。
「キングっ! 俺、もうっ…!」
「あっ、ダメ! お願い、外に……!」
 タクマが「しまった」と思った時にはもう遅かった。
 キングの蜜壷から引き抜かれたリョウの肉棒は、ビクビクと痙攣すると
先端から勢い良く白濁の飛沫をほとばしらせ、空中に弧を描くように軌跡
を残すと、キングの喉元までその洗礼を浴びせた。粘度を持ったそれはノ
ロノロとキングの胸や腹部を犯し、サカリのついた女の身体をよりいっそ
ういやらしく際立たせていた。
『せっかくの子種が…。』
 タクマにとってはまったくもって面白く無かった。ようやっとここまで
たどり着けたと思ったら、問題がただ先送りになっただけでは無いかと。
つまりはタクマにとっては孫の顔を見ることがこの2人に望む最終目標で
あり、これは、ゆくゆくは極限流の繁栄につながる大事な儀式だったのだ。

『これはなんとしたことか…。』
 腕組みをしたまま考えあぐねていると、後始末をする息子の息子に目が
止まる。まだ射精したばかりだと言うのにその硬度は失われずに、なおも
生殖活動への衝動も失われていないようだった。
「ふむ。」
 タクマは閃いて、ティッシュで自分の胸元を拭っていたキングの背後を
とると、そのまま後ろに引き倒した。
「えっ!? な、なにを…?」
 戸惑うキングをよそに、あっけにとられているリョウに向かって再び指
導を開始する。
「こら、リョウ。お前ばかり勝手にイッてしまうとは何ごとだ。
 まだキングは満足しておらんのだぞ。
 ちゃんと女をイかせてやれんうちは男としても未熟者と思え!」
 もっとも、キングは既に1度イかされていたのでイキにくくなっていた
上、リョウはかなりの間お預けを食らっていたのだから無理も無い話なの
だが、経験の浅いリョウにはそれがわからず、タクマの言うことを鵜呑み
にする。
「あ……ごめん、キング。」
「え…でも……っ、あふんっ!」
 口答えしようとするキングの首筋をさわさわと撫で耳腔に指を入れてく
すぐる。先ほどまでの行為で人生経験の豊富なタクマにはキングの性感帯
が把握できたようだ。タクマにいいように弄ばれて、すぐにキングはトロ
ンとしてしまう。再び興奮を始め、ピンと立ち上がった乳首への愛撫も開
始しながらタクマはリョウに指示を出す。
「先ほどは『基本は優しく』と言ったがな、興に乗って来た時はその限り
では無いぞ。
 時には強く激しく相手を攻め立てるのもSEXに置いて大切なテクニックだ。
 相手の機微を読み取って臨機応変にな。」
 こればかりはこの場で学び取るべきだと判断したのか、リョウは真剣に
タクマの話に聞き入っている。キングはタクマに乳房を揉まれ、乳首をこ
ねられて必死で声を堪えている。とても口を挟むゆとりは無い。
「それにいつもおなじ体位と言うのも興醒めだな。
 色々工夫してお互いに楽しむのもSEXの醍醐味だ。
 今日は代表的な体位を私が教えてやろう。
 どれ、キング。今度は四つん這いになってリョウの方に尻を向けなさ
い。」
 タクマの手淫から解放され促されると、キングは快楽への誘惑に勝てず
にのろのろと身体を回転させ、その指示に従ってしまう。両手両膝をつい
て四つん這いになるとリョウに向かって尻を突き出す。恥ずかしさにもじ
もじとしていると尻が振られ、かえっていたずらに男の欲情をそそるだけ
だと気付いて恥辱に顔を歪ませシーツに突っ伏す。結果尻が高くかかげら
れて、よりいっそう扇情的なポーズになった。
「こ…これで、いいのか?」
 従順な子犬のようにタクマに指示を仰いでいる自分に気付き、キングは
胸の奥が何故か熱くなるのを感じた。
「リョウが挿入しやすいように、もう少し脚を広げなさい。」
 黙ってうなずき、指示に従う。
「俺は…?」
「いくら何でもそこまでお膳立てすればわかりもするだろう。」
 少しあきれたようにタクマが言うと「そうか」とつぶやいてキングの腰
に手をやると、つかんで引き寄せ、突き入れた。
「あんっ!」
「すごい…つながってる所が丸見えだ。それに尻の穴も…。」
 やや興奮気味に目の前の様子を報告しながら、興味深げにセピア色の肉
の窄まりに触れる。
「やっ…!」
 排泄器官に触れられた羞恥心から思わず力が入ると、つられて肉壷が収
縮し、リョウが呻く。
「うぅ…っ。すごい締め付けだ。」
「あんっ、やだ…ぁ! ひぅっ!」
 リョウは奥まで突き入れた肉棒をずるずると引き出し、またゆるゆると
戻してその部分の肉が引きつり自分の物を飲み込んでいく様を見て楽しん
でいるようだった。
「あ、あ、あっ! んん、ん、んっ……!」
「すげぇ…ここ、根元まで飲み込んじまうんだな。」
 あまりの快感に頭の中が真っ白になるような感覚にとらわれながら、キ
ングは必死に抵抗を試みるが、細腰をリョウにがっちりつかまれて逃れよ
うにも逃れられない。そうしている間にも、リョウ自身がより深い快感を
求めようとその動きを早めてゆき、パンッ、パンッという小気味良い肉の
ぶつかる音が次第に部屋中に響き渡った。
「ひっ、ふぅぅっ、んっ、はんっ!」
 突き入れられるたびに反動で、支えを無くした乳房がぶるぶると揺れ
る。その動きを感じてよりいっそうキングの興奮は高まり、膣が収縮し、
リョウへと快感を伝える。先ほど射精したばかりなので今度はリョウが
早々には済まない。それで無くとも身体だけが資本の筋肉馬鹿である。さ
すがのキングもあまりの激しさに少しぐったりして来た。
「ほれ、言っておるそばからなっとらんな。
 相手の機微を読み取れと教えたばかりだろう。」
 タクマが制する。
「キングが疲れて来たようだぞ。体位と攻め方を変えたらどうだ。」
 リョウが応えてズルリと肉棒を引き抜き腰の戒めから解放すると、キン
グは肩で息をしながらごろりと横になる。蜜壷はジンジンと熱くしびれ、
まだ膣内をかき回されているような感覚にとらわれていた。
 リョウが「大丈夫か?」と問いかけてもふぅふぅと荒い呼吸をくり返
し、うつろな視線を返すばかりだった。それをリョウは「大丈夫」の合図
と判断し、キングの片足を持ち上げると抱きかかえるようにして自分の身
体を滑り込ませ、再び挿入して今度はゆっくりとした抽送をはじめる。
「ぁ……。」
 さっきとはうって変わり、ねっとりとかき回されて意識は翻弄される。
既にキングは快楽を追い快感をむさぼることへの抵抗が薄らいでいた。
リョウの腰の動きに合わせてキングも腰をクネクネとこすりつける。
「さぁ、キング。お前にも貞淑な妻としてのたしなみを覚えてもらおう
か。こっちを向きなさい。」
 キングはタクマに促され上体を起こす。
 タクマはあぐらをかいて胴着の前を開くと自ら肉棒を取り出してキング
の眼前に差し出す。
「行為のあとに主人のイチモツを綺麗に掃除するのも妻の務めだ。
 また、行為におよぶに支障がある時も妻のお前が奉仕して手助けしてや
りなさい。
 私の言わんとすることがわかるな?」
 キングは下半身から送られてくる快感の波に顔をゆがめながら無言でう
なずく。タクマはよしよしとキングの髪をすくように頭を撫でてやるとそ
のままその場所へと導く。キングは抵抗もせずにタクマのその場所に顔を
うずめる。リョウのそれと比べると硬度こそ劣りはするが、良く使い込ま
れた貫禄の逸品に顔を寄せ、タクマの顔を見上げて指示を待つ。
 タクマはキングの首筋を優しくくすぐりながら静かに言った。
「まず棹と袋に手を添えて優しく持ちなさい。
 お前がそうされると苦痛なように、いきなり強く吸ったりしたらいかん
ぞ。
 最初は棹の部分に唇を這わせて優しく愛撫するんだ。やってごらん。」
 言われるままにキングは左手を添えて肉棒を立たせると、右手で下から
包み込むように袋を持ち上げ、根元にそっと口付けをした。
「竿の全体をまんべんなく舐るように。玉の方は手のひらで転がすように
優しくな。…うむ。いいぞ、キング。その調子だ。」
「ん……んむぅ…。」
 キングは言われるままにタクマの肉棒に舌を這わせ、肉球を優しく転が
す。その間にもリョウからの攻めは休まる所を知らず、それどころかタク
マへの行為に嫉妬しているのか、よりいっそう動きは激しくなるばかり
で、堪らずにタクマへの愛撫を止めて顔を上げようとすると、タクマに軽
く頭を押さえ付けられて行為の継続を促される。
「ほら、口の方が留守になっておるぞ。そんなことでサカザキ家の嫁がつ
とまると思っておるのか?
 …しかしなかなか筋がいい。そろそろ亀頭の方を舐めてみなさい。裏筋
と、カリの部分もしっかりな。」
「はむ、んっ、あ…ふぁぃ…。」
「そのあいだ、竿も手でしごくんだぞ。玉への愛撫も続けるように。いい
な。」
「ん……んちゅっ、ぴちゃっ…。」
 リョウはと言えば、キングに対する罪悪感からこの父親の横暴をなんと
か止めたいと思う気持ちと、このまま従っていれば今よりもより素晴らし
い快楽を与えてもらえるのではないかと言う期待とのはざまでゆれ動いて
いた。しかしそのことを考えようとするたび、自分の陰茎を根元まで飲み
込んで絶えず快楽を送り込んでくる淫猥な肉壷に翻弄されて、罪悪感は
徐々に薄れてゆく。
「うむ。いいぞ。次はそのまま竿を飲み込みなさい。歯は立てないように
気をつけるんだぞ。」
「う、あむぅ…んっ、うぐっ…。」
「おぉ…ぅ、そうだ。もっと奥まで飲み込んで…そうそう、口が届かない
所は手でにぎってな。そのまま口をすぼめて、吸い上げるように口でしご
くんだ。」
「んぅ、ぐぷっ、むふぅ、じゅぷっ。」
 キングの髪をすくように優しく頭を押さえながら、タクマはキングに抽
送を促す。最初は苦しそうにしていたキングも、徐々にペースをつかんで
ジュルジュルとはしたない音を立てながらタクマの肉棒を吸い上げて行った。
 そんな2人のやり取りを目の当たりにしながらも、今日初めて味わった
ばかりの快感と、目の前で繰り広げられるあまりに非日常な光景にリョウ
の思考はすっかり麻痺し、そのうちそれまで考えていたことなどどうでも
良くなっていた。それよりむしろ、今まさに目の前で自分の父親の股間に
顔を埋めその肉棒をくわえこみながらも、自分の肉棒もその淫らな蜜壷に
くわえこみ快楽をむさぼるように腰をくねらせている一匹の牝への欲情を
いっそうあらわにし、同時に嫉妬していた。
 リョウはキングの下半身を仰向けにひねらせ、それまで窮屈そうにベッ
トに押しつぶされていた白くたわわな2つの果実を解放すると、そのまま
鷲掴みにして先端の突起にむしゃぶりついた。左手はその朱鷺色のしこり
を摘み、手のひらで全体をもみあげ、右手ではもう片方のやわ肉を根元か
ら持ち上げるようにもみあげながら、先端を口に含んで舌先で転がしチュ
ウチュウと吸う。下半身はよりいっそう激しく抽送をくり返し、上半身を
タクマに拘束されているのをいいことにキングの蜜壷を犯してゆく。
 キングが切なそうに顔をゆがめ、呻くようにねっとりと舌をからめて快
楽の信号をタクマにも伝える。タクマもそれに合わせ、キングの顔を股間
に押さえ付けたまま片膝を立てて体位を変える。
「んっ! んむぅっ!」
 愛する男に再び細腰をつかまれて激しくつき入れられながら、その父親
の肉棒に自らの意志でむしゃぶりつく、そのどこからみても淫乱そのもの
であろう自分の姿を思い、キングもまた何故かよりいっそうの興奮を覚え
ていた。それまで心の奥にほんの少しあった抵抗への意志は完全に放棄さ
れ、リョウの肉棒をより深く受け入れようと自らの手で尻を持ち上げその
肉を割り開き、タクマの肉棒をより深く飲み込もうと白い喉を反り返らせ
て激しく舌をからめ、吸い付く。快楽をむさぼろうと高くかかげられたキ
ングの両足は、リョウの動きに合わせてガクガクと振られる。その足首を
タクマがつかみ自分の方に引き寄せて、2人の動きを手助けした。
「そ…そんなに動かすと、出ちまう…。」
 リョウが呻くと、タクマは待ってましたと言わんばかりに激しくキング
の脚を揺する。
「んうぅっ! むぐ、うぶぅっ!」
「出してしまえばいい。その方がキングも喜ぶ。」
「で…でも……っく。」
「大丈夫。キングは今日は安全日だ。たっぷり膣内に出しても問題な
い。」
 もちろんそんなことをタクマが知るはずもないことはリョウにもわかっ
たが、このまま膣内に吐き出したいと言う黒い欲望に突き動かされ、「そ
うか」とつぶやいてリョウは腰の動きを速めて行き、自らの体重を乗せて
淫らな肢体に肉の楔を激しく打ち付ける。 
「んむぅっ! んンッ! んーっ!」
 ここへ来てキングはようやっとタクマのハッキリとした、ある目的に突
き進むための悪意を感じ取ったが既に手後れだった。タクマの股間から口
を離そうにも、軽く体重をのせられていて微妙な力加減で頭をがっちりと
固定されている。両脚も拘束されて自分の意志で動かすことも出来ず、か
ろうじて動かすことができる両腕も、リョウの肉棒に蜜壷を犯される快感
から身体を支えるのがやっとで、自らの意志で力を入れることもままなら
ない。
「できるだけ奥の方に吐き出すんだ。お互いにより深い快感が得られる
ぞ。」
 タクマの言葉がリョウの心を揺さぶる。
「くぅっ…出る…! キング! 膣内に…出すぞ…っ!!」
「んンぅん、ん、ん、むぅうっ!!」
 肉の楔が最奥に打ち込まれると、ぐい、とその蜜壷に押し当てられたま
ま、ドクリ、ドクリと脈打った。次第にリョウの身体から力が抜け、中の
物をすべて吐き出すように2、3度腰を前後に揺すると、白い粘液の筋を
作りながらその肉棒をズルリと引き抜く。
 当初の目的を果たしたタクマもまたキングの口腔の戒めを解き、だらし
なく蜜壷から乳白の粘液を垂れ流しながらぐったりと横たわるキングを満
足そうに眺めてうなずいた。

 それから1カ月。

 タクマが自室で新聞を読みながらくつろいでいると、扉をノックする音
が響いた。
「誰だ? おぉ、キングか。まぁ、そこに掛けなさい。」
 タクマに招き入れられて、キングは後ろ手に扉を閉めながらすすめられ
た方へ歩み、慣れた動作で座ぶとんに腰を下ろす。
「どうだ? 子作りには励んでおるか?」
 臆面もなくタクマがそうキングに問うと、キングは顔を赤らめて目を伏
せ、モジモジとした様子でタクマに言った。
「その…、そのことで話があるんだけど…。」
「なんだ? 言ってみなさい。」
「あの…その…、リョウとの事に不満はないんだ…でもっ、あの…。」
「気兼ねすることはないぞ。ハッキリ言いなさい。」
「ま…まだイケないんだ。リョウとじゃ…だから…。」
 タクマは読んでいた新聞をたたむと腕組みをして天井を見上げる。
「今夜また、リョウが眠ってからここに来てもいいか…?」
「……勝手にしなさい。」

 キングが少し嬉しそうにコクリとうなずいて部屋を出て行くのを黙って
見送ると、タクマは立ち上がってチェストの上に立て掛けてある妻の写真
を手に取る。
「ロネットや。これも極限流の跡継ぎのためだ。堪忍しておくれ。」
 語りかけるようにつぶやいて、写真立てをそっとふせ置いた。

「さて。今日は、いつも通り性行の跡を確認してから、後ろの開発の続き
をしてやろうか。道具はどこにしまったかな…。」

 サカザキ家は今日も平和である。





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